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英国園芸&珈琲日記

マンガ展

この国が誇る(略奪してきたともいう)財宝の数々で有名な博物館での、Manga Exhibitionに行ってきた。Mangaというくらいだから日本の漫画のみの展示である。

 

娘がジョジョをはじめ、アニメが大好きなので見に行くことにしたので、正直期待していなかったのだが、日本でもこのレベルの展示は見られないのではというくらいのハイクオリティだった。この展示のキュレーターは本当にすごい。

 

まず、不思議の国のアリスとウサギが Exhibitionに招待してくれる・・という設定で始まる。

大友克洋がアリスを描いているなんて知りませんでした。あの有名なオリジナルのアリス、ちょっとXrate入ってそうなアリスなどが並べられる。

そして秘密の穴に入ると・・

まずマンガとは何か、どこから読めばいいのか。右から左に向かって読むのは日本だけだ。またコマ割りとは、擬音、吹き出しとは・・といったことが手際よく紹介される。

 

そしてマンガの歴史。鳥獣戯画(ここにもウサギがいますね)から貸本、手塚治虫ちばてつや萩尾望都などの少女漫画、ガロ、現代まで、またテーマも愛や欲望、スポーツ、ホラー、音楽を漫画で表すこと、歴史を学ぶための役に立つ「マンガ」まで、これらを時系列ではなく、有名なキャラをうまく織り込みながら最後まで飽きさせず引っ張っていく。

 

編集プロダクションや、編集者が重要なこともちゃんと紹介されている。漫画を描くための道具(カラスペンやスクリーントーン!)の展示、そして何よりもすごいのは原画の展示・・。あの「あしたのジョー」のラストシーンの原画をこの目で見ることがあるとは思いませんでした。

展示は、原画の上にガラス板を置いて、ネームの上に英語を貼って読めるようにしてありました。

 

杉浦日名子、999、ポーの一族ジョジョ、本物の原画がこんなに美しいものであるとは、涙が出そうになるくらいでした。印刷だとどうしても線がつぶれてしまうんですよね。

あと少年ジャンプ特製の原稿用紙。漫画家にあこがれている人には、この用紙に絵を描くことがどんなにあこがれなんだろうと思ったりした。

 

また赤塚不二夫の反体制的な面を紹介していたり(ウナギイヌがどうして死んだのかご存じでしょうか?)、「風と木の詩」はもちろん、「きのう何食べた?」から「弟の夫」の展示や、戦争マンガで有名なこうの史代、「ちはやふる」や東村アキコまで、よくもこんなにポイントを押さえた展示ができたものだと感心してしまいました。

 

ゴルゴ13が外務省のキャラになっているポスターとか、諸星大二郎とか、選択が実に気が利いているんです。宗像教授が大英博物館を調査している映像が流れていたりとかね。

思わずぶ厚いガイドブックまで買ってしまいました。

 

わたくし、今ではすっかりスポーツの人のようになってしまってますが、大学では象牙の塔に入るべく文学理論などを勉強していたので、芸術作品にはとてもうるさいんです 笑

でもわかってくれる人が少ないので普段は何も言わずに過ごしているのですが・・今回の展示には「友よ!」と言いたくなってしまいました・・原画を見ていると漫画家はこの絵を1枚1枚、締め切りに追われながらも本当に、心を込めて描いているんだということが伝わってきて、泣けたよ。どれもこれも、実に美しい。マンガとは線なのですね。

 

そして現代のマンガは、4K、5K みたいに、絵の精度が上がって昔のマンガに比べると異様なくらいシャープな印象。実際タブなどコンピュータを使って描いている人も増えているんだろうし、資料もけた違いだろうからなあ。

 

30度越えの暑い日で、博物館の近所のトルコレストランでランチを食べて、娘の好きなバブルティーを飲んでご機嫌・・だったのだが、電車の故障により1時間ちかく車両に閉じ込められ、何度も乗り換えを余儀なくされて帰りは地獄を見たのであった。こんなに遅くなる予定じゃなかったから、留守番させていたぷぐ子が心配だったが、室内は閉め切っておけば外よりずっと涼しいので大丈夫だった。

 

やっぱり素晴らしい作品を見るというのはいいなあ。時間に追われ、効率のことしか考えていない状態だと人間の魂は滅びてしまう。

 

さすが小熊英二さん・・・。

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