Tortoise Bar

英国園芸&珈琲日記

座ってみる庭ーマイドルトンハウス

6月21日、夏至の日に2つの庭を訪れました。

今回はイギリスの偉大なプランツマン&プランツウーマンをめぐる旅です。

 

最初にいったのがこちら

Myddelton House Gardens

www.visitleevalley.org.uk

英国の植物の泰斗、エドガー・アウグスタス・ボウルズの屋敷の庭園です。

20世紀にさまざまな植物を集め、自身もクロッカスやコルチカムの研究家として有名でしたし、この時代の有名なガーデナーたちと交流もありました。

現在もアイリスのナショナルコレクションがあります。

ちょうどアイリスの花が終わったところで何も見られず残念でした・・

 

多肉植物でボウルズの名前を作ってあります

いつもですと、庭に入っていくといい感じがするのですが、ここは、???

 

少し歩いてみてその理由がわかる。

手入れが行き届いていません。

 

植栽のピークが少し過ぎてしまい花が終わっていたこともありますが、ぼさぼさな感じです。

 

屋敷から見下ろすところに池があり、水が音を立てて流れる仕掛けもあり、また、この町ができた時の尖塔をあしらったルーム式の庭、日本庭園を造りかけたけどやっぱりやめてオリエンタル調にした日陰の庭、キッチンガーデンにクラシックな温室など、ポイントはたくさんあるのですが、予算がないのでしょう。

 

それが、うーん・・ という印象につながる。廃園、と思うと風情はあります。秋に来るほうがいいのかもしれませんね。

 

プラントコレクターだったこともあり、珍しい植物がいろいろあるはずですが残念ながら名札がついていたりいなかったりして、見きれません。悲しいことに枯れているものも見受けられました。

たぶんここでしか見られないような貴重なものもたくさん埋もれているのではないか。

 

たとえばカリカンサス。

最近のイギリスで少し知名度が出てきたくらいですから、20世紀のはじめにすでにこれがあったというのは凄いです。花が咲き終わりで見づらいですが↓

 

それからこちら、悪名高きJapanese Knotweed

イタドリです。帰化して英国全土に広まり、専門の駆除業者もいるくらいで、これがいったん家に生えてしまったら自力での根絶は不可能に近い。

 

ボウルズの頃は、アーキテクチュアルプランツとして大事にしていたようです。

 

 

 

ふっとベンチに座ってみました。

とても気持ちが良い。やっぱり庭は座って眺めるものかもしれない。

庭主は、コレクションには力を入れていましたが、デザインはそこまで考えていなかったといいますが、それも自然な感じがして、実際に人間が住む家の庭としては、こんなのがいいのかもしれないな。

でもまあ、茂りすぎて、植物が少しかわいそうかもしれません。

 

 

ここへきて良かったと思う出会い。

 

エレン・ウィルモット

エレン・ウィルモットもまた有名な女性プランツコレクターで、大富豪の家に生まれ植物に財産を蕩尽してしまいました。人生の後半で女性の恋人との破局が原因で精神不調となり、園芸世界での名声を投げ捨ててしまい、不遇のうちに世を去りました。彼女がプランツハンターに見つけさせた植物はたくさんあります。

 

このバラはエレンの名前をつけて作られたバラです。

もうびっくりするくらいきれい。一重咲きで有名なデンティ・ベスの子ですが、デンティ・べスはオフィーリアの直系なんですね。知りませんでした。

お屋敷の前で咲いていて、見とれてしまいました。

 

 

こういう古いバラがこのお屋敷にはいくつかあり、当時のバラの世界がしのばれる。

花が咲いているところを見てみたかった・・。

やはり実物と、それが育っている環境を実際に見ることは非常に大事です。

データでは1メートルにも達しないといわれていますが、このエレン、2メートル近くはありました。私の写真では、あらそう? としか思われないでしょうが、美の化身でしたよ。

 

他にもオールドローズとして、フェアリー、バレリーナのスタンダード仕立ての回廊(手入れが今一つで残念)、マダムアルフレッドキャリエール、ペンバートン作出のTrierなど。

 

通称アネモネローズと呼ばれている Rosa Laevigata 'Anemone'

 

 

さらに、車で出るときに気づいたのですが、門のエリアにあのロサ・プテラカンサもあったのです。赤いとげがすごいインパクトがありました。写真撮りたかった・・

 

今満開ということはランブラー系のバラなのでしょう。しだれてますしね。

 

 

マイドルトンハウス、侘びた風情も悪くないのですが、過去を向いているように感じ、少し寂しかったかな。この規模の庭を21世紀の今、保有できているだけでもすごいのかもしれませんが・・。

 

そして今も名声の高い庭は、手入れの維持及び適切なアップデートが行われていることがよくわかります。最低限の手入れだけでは、庭は朽ちていってしまう。

 

古いものを生かしながらも新しいものも取り入れる、真のlegacyとは、元の持ち主の意志を尊重しつつも新しいものも作っていくことだと思います。これが本当に難しいのですが、それを実現しているのが次の庭、べス・チャトーガーデンだと体感してきました。

 

庭は、足を運び、座って、感じるものですね。音楽や舞台と同じでその場に行ってわかることがたくさんあります。どんなに情報を集めたところで、その日、その時、その場のなかで感じ取ったことにはかないません。

 

 

 

 

 

時間があったのでお茶したらロビンが来た。

つづく。