Tortoise Bar

英国園芸&珈琲日記

ラストローズ・・本当だろうな

現在我が家にはバラが11本あります。

さらに挿し木株が5本。トーマス・A・ベケットは今地植えの挿し木作成中で、それを入れると合計17本の予定。

 

バラ愛好家としては大した本数ではないものの、1本1本を愛をこめてお手入れするなら最大20本が限度では・・と思います。他にも挿し木する可能性も考えると、新しい株はそろそろ打ち止め。

 

バラは華やかな分、庭がごちゃごちゃして見えるという欠点もある。それゆえ色も絞っており、黄色は不可、バフ・ビューティだけ例外。完全な黄色ではない。あっ、グレイスは黄色か。でもグレイスも黄色&オレンジの微妙な色で調和しやすい。ぱきっとした黄色、例えばグレアムトーマスは不可ということ。

 

赤はベケットだけで基本フロントの主役はベケットさん、今2本あるのを最大4本まで増やす予定。

 

また、手入れの困難さも考え、クライマーは置かない。例外はスパニッシュ・ビューティと、パティオクライマーのパープルスカイライナーだけ。ブルーランブラーがどうしても欲しくて、でもとても庭主に扱えるサイズではないから探しに探してこの品種に落ち着いた。

 

あっ・・クライマーといえば義妹の家からの挿し木、ニュードーンを忘れていた・・ 現在5センチ程度のサイズですが・・

 

もし育てることができるなら、あれもこれも庭に入れたいけれど、いろいろと考えた末自分にとっての究極のバラは・・・

 

それがクリムソングローリー。赤のハイブリッドティー。バラの歴史上の金字塔、そしてクリムソングローリーと言えば日本人にとっては・・「ポーの一族」。

 

偉大なる作出家コルデスの作。コルデスと言えばアイスバーグ。今持っているバラで1本選べと言えばアイスバーグ。樹形、葉の色、花の良さ、そして育てやすさ、完璧です。香りがないことだけが残念だけど、秋の花は少し良い香りがします。挿し木で育てているユキちゃんも、小柄ながら大変美人で、花形の良さは親以上かもしれません。

 

アイスバーグにちなんで、その血を引くヘリテージも探して手に入れました。本国でもカタログ落ちですが、デヴィッド・オースチンの許可のもと販売しているナーサリーがあるので、そこから。現在英国のナーサリーは国外への販売を一切停止しているので、日本からの購入はできません。

 

 

クリムソングローリーについては・・第2次世界大戦中、敵国ドイツのバラはけしからんと言っていた英国人もこのバラだけは育てていたという伝説があって、本当かよ・・ とソースを探しました。

この話が広まったのは、どうやらミスターローズこと鈴木省三氏によるものらしい。ミスターローズが言うなら仕方ない 爆

さて、第二次欧州大戦争ははじまった。ナチスドイツのヨーロッパにおける軍靴は各国を踏み砕きつつあった。イギリスの首都ロンドンに爆撃さえが加えられる日にもなった。

しかもイギリスバラ愛好の話は、映画「ミセス・ミニバー」で有名であるが、さすがにこの頃のバラのカタログには、ドイツのバラは全部抹殺されて、イギリス、フランス、アメリカのバラだけしか載っていなかった。

しかし、クリムソン・グローリーだけはカタログからはずすことができなかった。なぜなら、あまりにもイギリス、フランスいたるところ愛培され、名が英語であることもあって、イギリスで作出されたバラのようになってしまって、いまさらのようにこれはドイツのバラだとは書けなくなってしまったのだ。

引用:「ガーデンライフ」1971年11月号

全ての記事はこちらをどうぞ。涙なしには読めません。

karuchibe.jp

 

やはり偉大なりコルデス・・古き良き20世紀人という感じがします。現在のRHSウィズリーの場所は、もとコルデスのナーサリーだったそうで、イギリスにも縁が深い人です。

 

今また、同じような世の中になってきているのですが、ロシアのバラというのがあったら皆引っこ抜いてしまうのでしょうか? クラシック界も演奏品目を変更しているとか、なんてばかばかしい・・。

 

私が子供の頃、バラというのは美しいけどちょっと怖い存在だった気がする。

たとえばこういうの・・バラ、というより薔薇。

chinchiko.blog.ss-blog.jp

 

中井英夫の「虚無への供物」は5色のバラをめぐる物語。この本の執筆当時は、図書館に行ったり取材したりして調べて書くしかなかったことを考えると、情報量が驚異的です。21世紀になって読み返すと、中二病をこじらせまくりもいいところ 笑 しかもミステリーとしても破綻している。しかし、中井英夫の家族史&戦争や災害で人間が無意味に死ぬことへの怒り、悲しみが軸になっているため、今でも読めるものになっているかな。

 

それ以外の作品は今読むと時代遅れの感が否めない。耽美・異端系は社会批評性のないものは時間がたつと読めなくなってしまいますね。

 

そんな、バラについても情報がほとんどない中、1973年の漫画にクリムソングローリーを登場させた萩尾望都もすごい。実物を理解して「小鳥の巣」を読むとまた感想が違ってきます。クリムソングローリー以外のバラでの置き換えはできません。2000年以降は、絵柄が硬くなり、かつ扇情的な描き方になってしまって、続編は私には読めないものになってしまいました。

 

ハイブリッドティーもここまで集めると圧巻・・ 香椎花園ってもうないんだ??

anecj3.livedoor.blog

 

なぜこのバラが今もこれだけ魅力を持つのか・・ というと、それは香り。赤バラで香りがある品種は少なく、その中でもクリムソングローリーは突出しているそう。

 

さて、21世紀の英国に戻りまして、今流通しているものはクライマーしかありません。我が家にクライマーは置かないのが原則。

 

しかし隣家のフェンスがきれいになり、ここに誘引するか・・ などと悩みに悩んでいたところ、オリジナルのコルテスのバラを発見し捕獲。この国では唯一ここでしか買えない・・ ピータービールス。

 

ピータービールスもご本人が亡くなってから経営が難しいのか、品目をどんどん減らして行っています。この、ブッシュタイプは長いこと品切れだったのですが今年ようやく入ったようです。

 

裸苗での注文なので、届くのは11月頃。1メートルも行かないということですが、じっくり育てて大株にしていきます。オリジナルが発表されたころとは気候も違うので、多分大きくなるんじゃないかな。アイスバーグも本来の樹高は1メートルちょっとくらいですが、我が家のは夏には2メートル超えてます。

 

というわけでこれが我が家に迎える最後のバラ・・ 本当だろうな 笑

Crimson Glory - Red Climbing Rose

写真は下記から引用

Crimson Glory Climbing | Climbing Rose | Trevor White Roses