Tortoise Bar

英国園芸&珈琲日記

吉田健一の珈琲

これまでの体験上、最高であると思っているここのコーヒー。

むかしは中心部にお店があり、ロンドンでも指折りの店として有名だったが閉めてしまい、シティの一角でひっそりと運営中。

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観光客など一見さんよりも、嗜好品にうるさくお金もあるシティの人々を相手にするほうが、ビジネスとしてはいいに違いない。毎日買いに来る人も多いだろう。

 

何がすごいって、コーヒーなのに水のように飲める。熱くもなくぬるくもない絶妙の温度。人間の感覚は気温や四季によって微妙に変わるから、その日の天候に合わせて淹れ方を変えているという気がする。

 

コーヒーというものは酸味、苦み、果物のような甘味などいろいろな風味を持っているものだが、それがない。

それではコーヒーではないではないか、と思うかもしれないが・・口に入れた瞬間とても滋養のあるものを飲んでいるというか、いっそ健康になったかのような気持ちになる。

 

コーヒーにはまたカフェインが入っているので覚醒作用を求めて飲むということもある。でもここのコーヒーには大量のカフェインがもたらす高揚感のようなものは全くない。そのかわりにヨガや瞑想などをやったあとで目が覚めるような、心身が冴える感じすらするのだ。

 

いったい、何をどうすればこんなコーヒーになるのかと思うが・・。

極上のレストランなどでもこういう経験はある。食べれば食べるほど心身が冴える。普段は水を飲んででも、ここで1杯のコーヒーを飲むために時間とお金を用意したほうがいい。

 

きっと吉田健一なら、こういう淡いが深いもののことを的確に書いてくれたと思うのだけど。

 

そしてそんなコーヒーを、別に自慢するでもなく、にっこり笑って作ってくれるお店のお兄さん。しびれる。